古津軽 古津軽

KOTSUGARUPERSON

古津軽を紡ぐ人

  • よされは男女の恋の掛け合い。
    粋で艶やかな黒石の町民文化を
    肌で感じて欲しい。

    黒石観光協会
    野呂 淳一氏

500年以上前に唄われた、男女の恋の掛け合い唄が起源と言われる「黒石よされ」。津軽三味線奏者であり、国内外でよされの普及に取り組んでいる黒石観光協会の野呂淳一さんにお伺いしました。

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黒石市で8月に開催される日本三大流し踊りの「黒石よされ」に参加したのですが、浴衣と花笠がとても華やかで、津軽三味線や太鼓に合わせて踊るのですが意外と激しくて(笑)、夏の最高の思い出になりました。
野呂さん :
「黒石よされ」は商人町の黒石だからこその祭りなんです。藩政時代、客を呼び込むために藩が知恵を絞って奨励したのが「よされ」で、実は男女の恋の掛けあい唄が起源なんですよ。
元踊りは農家が楽しむ盆踊りなのですが、藩政時代に黒石市の愛宕山地蔵院の境内で、武士も町民も農民も、身分関係なく一緒になって踊りました。武士は仮装をして参加し、良い仲になるとお堂の後ろに隠れて恋の掛け合いをしたという唄の歌詞も残っているんです。
  • 流し踊り。途中で団体ごとに「廻り踊り」も始まる。
  • 武士も仮装し参加(絵巻)
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仮装までして(笑)、男女の出会いの場だったんですね。
皆さん指先まで動きがとても美しく、花笠で顔が見えないのも、とても魅惑的に感じました。
野呂さん :
よされを踊る人の大半は女性なのですが、黒石は手踊りが盛んで、5大民謡の1つ「じょんから節」の唄は黒石の城主千徳公が津軽為信に滅ぼされた際、その戦いで炎上した神宗寺の常縁和尚が為信が執拗に攻め立てたことに抗議し、浅瀬石川に身を投げ、そこから「情念(じょうねん)川原」→「じょんから」となり、「津軽じょんから節」となって黒石に民謡が定着しました。そこから手踊りも盛んになり、手踊りは手の動きが艶やかで所作が美しいこともあり、黒石の女性は色っぽいとか、艶があるとか言われることが多いんですよ。
  • ポスターは女性の艶やかさを表現(黒石観光協会制作)
  • よされの演奏は生演奏に生歌!
    この日、野呂さんは小鼓担当
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まさによされに参加して、見よう見まねですが手や体の動きが少し艶やかになった気がします!
祭で流れる民謡が生歌(!)だったのも驚いたのですが、歌い手の方も澄んだよく通る声で、とても艶っぽく感じました。
野呂さん :
実際、唄「黒石よされ」には「水が清い 水が良いのでよい酒できる」、唄「黒石甚句」には「嫁に来るなら白粉いらぬ 黒石湯の町 肌光る」とあり、黒石は水が良く温泉も良いので、女性は白粉はいらないと唄っているんですよ。
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せっかくなので、粋で艶やかなよされの雰囲気を、祭の日以外でも感じることができればと思うのですが・・・
野呂さん :
松の湯交流館の近くの「かぐじ広場」というところに「恋よされモニュメント」があり、像が手に持つりんごの穴に2人で一緒にコインを投げ入れ、1回で入れば恋が成就すると言われています。実際に結ばれたカップルもいるんです。この辺からも「恋の掛け合い」の雰囲気を感じていただければ。また毎年、数日かけてよされを学ぶ講座も開催しており、県外はもちろん、ニューヨークからも来ています。あとは「水が清い」というところで、昔は30軒もの造り酒屋があったのですが、200年以上続く鳴海醸造店では八甲田山系の伏流水を使用した地酒の試飲も楽しめます。
  • 恋よされモニュメント
  • 鳴海醸造店
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ほろ酔いでこみせ通り散策も楽しそうですね。最後に、野呂さん的よされの楽しみ方を教えて下さい。
野呂さん :
「恋の掛け合い」の雰囲気を楽しんでもらいたいですね。津軽三味線で奏でる「夜かぐら」も艶やかで、一気に気分が盛り上がります。また、「よされ」の語源は、豊作時は「仕事をよくして楽しみなされ」、凶作時は「こんな世の中は早く去れ」と言われていて、現代にも通じるものがあると思います。そんな当時とのつながりを感じながら、ぜひ地元の人と一緒になって踊って、黒石の粋で艶やかな町民文化を肌で感じて欲しいですね。